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2020/05/24 15:28
磁器のうつわについて
ネットショップのほうからお問い合わせがいくらかありましたので、良い機会なので少々長くなりますが、この点について書かせてもらいますね。
長らく僕のトレードマークだった艶消しの表情の、青みがかった釉薬の磁器のシリーズをいったん終了するわけですけども
この釉薬がかけられた陶器の表情はとても美しく、形状がろくろ作りで指の跡や動きを出した場合は、焼成時に表面の凹凸の上を流れ落ちながら様々な表情を見せてくれて
また、輪花のような型を使った凛とした形状も、凹凸にたまった釉薬の青みが引き立ててくれて、どちらにも合わせてくれる、本当に万能な相棒でした。
岡晋吾先生のもとでの4年間の修行も終盤に差し掛かったころ、それまで膨大な釉薬のテストをさせてもらっていた中から
ほんの5センチ四方の小さなテスト片にかけた、この青みがかった艶消しの釉薬にひかれ、それから10年あまりを共に歩んできました。
この10年という期間が示す通り、僕自身とても愛着をもった、手放せない釉薬だったのですが、制作量が増えるにつれ、ロスにも悩まされました。
どうしても黒点が生じてしまうのです。
この黒点は釉薬に調合している天然原料中に含有されているものだったり、焼成時に窯のどこかしらから降ってきて付着したものだったりと原因は様々です。
ヤキモノは最終的に1300℃の高温の窯で焼き上げるのでどうなって出てくるかわからない。焼いてる途中で「ちょっと待った!そこ修正!」とは出来ないのです。それが魅力でも短所でもあります。
僕の白磁についても最終的にどのくらい黒点のない完全な品として焼き上がるのか予想がつかないため、気苦労が絶えませんでした
販売先も増やせない。
気になりませんよーと、景色の一部として受け取ってくださる方もおられますが、やはりB級品のように受け取られてしまうことがほとんどで。
個展なら焼き上がった数を出すだけなのでまだ良いのですが、取次店、料理店からのオーダーでしたり、お祝いの品でしたりした場合にはもう、オーダー数をちゃんと期日までにご用意が出来るのかいつも気が気ではありませんでした。
不安で心配で、予定数の倍以上作ったことも数えきれず、あの頃はよく頑張っていました(笑)
もしこの白磁がもっと野趣にあふれワイルドな風貌だったらこんな黒点なんて景色のひとつとして愛でられるのです。
よくご覧になってください、実際ほとんどの土ものの陶器には黒点なんていくらでも生じているんです。でもそれらは景色の一部としてマッチしているので気付かない。
僕の白磁は黒点とは共存できなかった
こういった悩みと並行しながら、やはり地元の素材を使ったものを作りたいという気持ちへと徐々に至っていきました。
モノゴトに冷めがちな僕にも地元愛が芽生えはじめ「唐津焼の作家です、地元の素材を愛し、作品作りをしています。」と言いたくなってきました。
年をとったのでしょうか...w
白磁ではありませんが「白」という色が好きです。自分らしいなとも思います。
(本人はさほど清廉潔白でもないのですが…)
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今年に入ってからの投稿にすでにあるように唐津焼の白色「斑唐津(まだらからつ)」をベースに今後は作品展開をしていきます。
磁器の艶消しの表情と比べると、ぴかっと艶やかでその違いに戸惑われるかもしれませんが、本来うつわは光沢があるもののほうが料理が映えやすいですし、今後の作品も使っていただければ良さををご理解いただけるはずです。
以上、今年大きく方針転換するまでの顛末をつらつらと書かせてもらいました。お付き合いいただきありがとうございました。
そして今まで僕の磁器の器を愛してくださった皆様へ、心より御礼申し上げます。
長くなりましたが、ご理解をお願いすると同時に、この移り気な、“赤水窯 / 熊本 象”という作り手を今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
※磁器の作品の在庫ぶんにつきましては、この五月現在のネットショップでのセット販売期間を過ぎましたら在庫分を少しずつアウトレット品とし、単品販売にてアップさせていただきます。そちらの機会にご検討くださいませ。